⑪EBMの実践

2023年度受験者用のルーブリックでは、
学習目標は、「臨床症例に対し、標準的な手順により臨床疫学的なエビデンスを検索、吟味、適用し、臨床上の意思決定の最適化に利用できる。」
ルーブリック(優)は、「エビデンスを調べる必要性が高い症例に対し、妥当な形での疑問の定式化、エビデンスの系統的収集とそ の比較検討を含めた批判的吟味、患者への適用、全ステップの評価を行っている。」と記載されています。

つまりはふつうにEBMの5 stepsを行えば「優」になるはず...

EBMの5 stepsといえば、
Step1:問題の定式化
Step2:情報収集
Step3:情報の批判的吟味
Step4:情報の患者への適用
Step5:Step1~4のフィードバック
です。

【Step1】
 構造化:臨床疑問をPICOの形に整えます。ここでの臨床疑問は前景疑問でないと書きにくいです。


【Step2】
 まずガイドラインやUpToDateで記載がないかを確認、あれば文献を孫引きします。僕の臨床疑問はUpToDateに記載されているものの、エビデンスレベルの高くないコホート研究が根拠となっていました。そこでRCTやSR/MAがないかをPubMedで検索します。検索語も" "や、接続語、[Tiab]などを使って工夫して検索することが必要です。ここで2つのSR/MAがヒットしました。


【Step3】
 ここはどこでもやっている抄読会みたいな感じです。


【Step4】
 このStepが最も大切です。エビデンス、患者の病状・周囲の状況、医療者の臨床経験、患者の選好と行動、を図のように書き込んでいきます。患者中心の医療の方法のように、エビデンスという医学的な面だけでなく、患者のillnessやcontextを考慮した方針決定を行います。



【Step5】
 最後に振り返ります。

ポートフォリオの中では書きやすい分野だと思いますので、専攻医1年目の先生にはオススメですね。

参考文献としては、
日本プライマリ・ケア連合学会 基本研修ハンドブック

 だいたいこれ読めばいけます。
・"The SPELLのはじめて批判的吟味シート [The SPELL]

 南郷先生の作成されたEBM関連の資料集です。これを使ってStep3をすすめるとわかりやすいです。

総合診療・新家庭医療のポートフォリオ

僕は総合診療+家庭医療の専門プログラムに乗っかっています。現在の自分は、何のポートフォリオを書かなければならないのか整理しました。自分は理解していない側の専攻医なので、理解が間違っていたらご教授ください。

 

ポートフォリオは、「さまざまな学習と業務の記録、それらの振り返りをまとめたもの」だそうですが、総合診療専門医研修や新家庭医療専門医研修においては、ポートフォリオを記載しながら各分野の学びを深める研修となっています。最終的には専門試験にあたって提出・口頭試問もあるようです。

総合診療専門研修では、以前はタイプAとタイプBの2種類の記載方法がありましたが、現在はタイプBの1種類となっています。僕はタイプB一択世代です。

新家庭医療専門医もとるプログラムなので、僕は「新家庭医療専門医ポートフォリオのルーブリック」に従って記載しています。

http://www.primary-care.or.jp/nintei_sk/pdf/rublic_20200105.pdf

僕のプログラムでは、新家庭医療専門研修のポートフォリオを記載して、それを総合診療専門研修の対応した領域のポートフォリオに落とし込むという形式をとっています。


新家庭医療のポートフォリオはJPCAの「新・家庭医療専門医制度におけるポートフォリオ詳細事例報告と評価についての方針」によると、報告・事例の記述・事例の考察の文章を合計 1600~2800 字におさめるように、と記載されています。2800文字ならおそらく3ページにはなると思います。

http://www.primary-care.or.jp/nintei_sk/pdf/policy2022_shin.pdf

総合診療のポートフォリオはJ-GOAL「経験省察研修録 タイプB」に、2ページ以内におさめるようにとされていますので、記載した内容を調整して落とし込む必要がありそうです。

 

新家庭医療研修では、合計20本という果てしない数を記載する必要がありますので、日常診療をこなす傍ら、ルーブリックとにらめっこをする毎日です。